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笠原悠暉プロの盤上見聞録⑤~次の一手コラム~AIと人間の差が一番出るのは?それは、形勢判断。AIが示した判断とは?そして人間の冷静な判断を阻むものとは? 

  • hnagao0
  • 12 分前
  • 読了時間: 4分

こんにちは。棋士の笠原悠暉です。棋士生活3年目になりました。4~6月は手合繁忙期で充実していて、棋士冥利に尽きます。執筆時点では今年の成績は9勝3敗。内容も前より向上している感じがして、ある程度満足できる成績かなと思います。この調子で頑張ります。さて、今月のテーマは「フリカワリ」。元々あった石が吹き飛ぶため、できあがった形を判断する時に、石の流れを重視する人間としては現局面だけを見た冷静な判断ではなく、感情的な判断になってしまいがちです。また、全く見慣れない局面になることが多く、冷静な形勢判断をするにしても人間の経験則が活きづらいです。そのため、AIと人間で最も差が出る、人間の苦手分野だと考えています。

この記事を読んだからといってそのフリカワリの判断力が劇的に上がるわけではありませんが、いくつか僕が実戦で困った例を挙げてケーススタディしていきましょう!

①    

図1

右上の三々定石から派生した変化。右上は黒が1手多い形となります。どちらを持ちたいでしょうか?

自分は黒番で打っていたのですが、「この4子取れたらしょうがないか」と思っていました。外側の黒の厚みも一見立派に見えます。

しかし、よく見ると白から10-三を利かされる含みや、14-八の切り味があるのが気持ち悪い。よって、AI先生の評価は「やや白」~「けっこう白」のようです。(コラムの執筆に際し、2種類のAIを使い分けているので評価にブレ、差異があることをお含みおきくださいm(__)m)


②    

図2


黒が△にアタリした局面。白はツナぎますか?それともサガりますか?


これの何がフリカワリなんだ?と言いますと、



図3

白が1とツナいだ場合、一例ですが黒12まで上辺の白は全滅します。(2=7)

こちらの図は白の外勢と黒の実利のフリカワリと言えるでしょうか。

ただ外側の白は少し固まるものの、ダメ場を打ってる気がしないでもなく、白1の持ち込みが酷いように見えます。



                                                              図4

一方、白1とサガった場合、黒は2を利かすことはできますが、白3が当然の好手(対局者は両者とも全く気付いていませんでした笑)。先ほどの図で、黒に4と手を戻させることができ、左上の黒を取ることができます。これは上辺白と左上の黒で立派にフリカワリが起きているように見えますね


つまり、図3と図4だと、当然図4が正解………


かと思いきや、AI先生曰くツナギの図3の方がはっきり白としては良いようです。

外側の白の固まり方が違うことで左下黒の強度が全然違うこと、先手を取って4-十五のオシに回ることができることが高く評価されているようです。

これは人間には分かりにくい。図3の1の持ち込みを過大評価する人も多そうに見えます。

③  


  


                                                              図5


②を踏まえた上での最終問題です。

黒は12-一か13-一のどちらかにアテるしかないのですが、どちらをアテますか?

参考までに、12-一にアテた場合はコウになり、13-一にアテた場合は無条件で上辺の白を取ることができます。


具体的な図が見えないから判断しづらいやんけ!という声が聞こえてきそうなので、図を作ってみましょう。

まずは右をアテた場合。

                                                               図6


すると、黒7まで、図2に戻りますね。つまり、白はツナいで、白が外勢を築く図3に回帰します。



図7

一方、黒が左をアテた場合、白には4という恰好のコウ材があります(2=12-三)。一発コウなのであいさつするわけにもいかず、白6までとんでもない利益を挙げられますね。黒7と破壊しに行く手がどの程度厳しいかまで見通すのは難しいですが、やはり無条件で取れているところをコウにして6まで右方を取られているのは辛いようにも見えます。


みなさんは図3と図7、黒を持った時にどちらがお好みでしょうか。


気になるAI先生の評価は……?なんと「どっちでもいい」とのこと。図3と図7、全く景色は違いますが、評価値、目数上の差はほとんどないようです。

そんなこと言われたら拍子抜けしますが……確かにそういうパターンもあるか……笑

黒としては、図5でどっちをアテるかを決める時に、最低でも図3、4、7は少なくとも読んでおく必要があります。できれば図7の打ち込みの厳しさもいくつか図を作って判断しておきたいところ。考慮すべき図が多い上に、全ての図の景色が違いすぎて、本当に人間的には判断に苦しむところです。


ちなみに囲碁の専門家、プロフェッショナルたる自分が図5の時点でどのぐらい読めていたかと言いますと、

・図3は読めていた(想定図)

・図4の白1のサガリは全く頭になかった。実戦でこの進行になった後も、白3のカケツギは全く見えていなかった

・図7の白4に絶好のコウダテがあることも全く見えていなかった(白2ですぐコウを仕掛けず、右下にコウダテを作りに来ることを想定していました)


……ひどすぎないか????


やはり囲碁は本当に難しい。AIで検討する度に再認識させられます。

ただ、本当に面白い。AIでの検討でいろんな見えてない図が目まぐるしく出てくると、ワクワクも絶望も感じますね。


独り言を語ったこのあたりで今月は筆を置きたいと思います。また次回のコラムでお会いしましょう♪

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