笠原悠暉プロの盤上見聞録⑦~次の一手コラム~今回は同教室出身の二人が激突!!超難解定石から難戦に、白のサバキの一手や如何に?!
こんにちは。棋士の笠原悠暉です。今月は特別編!「スペシャルな相手との対局を……」と言っていましたが……?
なんと、同じく知得出身で、現在では隔月で指導碁を担当させていただいている、表悠斗四段と、阪急納涼囲碁祭りの若手棋士のイベントで対局することができました!!同じ関西の棋士なのですが、僕は日本棋院関西総本部所属、表四段は関西棋院所属ということで、基本的には予選が別で行われるため、なかなか普段の手合いでは対戦機会が少ないのです。貴重な機会ですね。
テーマ図:この局面での白のスムーズなサバキを問います。

テーマ図の解答の前に、初手から振り返っていきましょう。僕の黒番。

黒1~5は現代の棋士の中で最も流行している布石。三々入りから難解定石に突入するかと思いきや、黒17と変化します。評価値的には少し落ちますが、模様が好きだったり、ある程度研究をしていたりすれば十分採用に値する手。白24は様々な応手が考えられるところですが自然な一着です。黒25では出切りが普通なのですが、白4が1路上の小目ではなく星の場合はこの手を選択できた、ような気がするという昔研究したかすかな記憶だけを頼りにこちらを選びました。

パッと見3以降とシボられて、とんでもない格好になるので、黒として選べない図のように思えます(7=10)。ですが周囲の白もそんなに強くないため、意外とバランスは取れています。白11は10-四に飛ぶ手も有力ですが、普通はこちらのハネから考えそう。以下とりあえず黒18の這いまではほぼ一本道。ここで自分はまたしてもかすかな記憶から「白は19にハネられないのではないか」と考えて、というか期待していました。が、普通にハネられました。ここの一路は死活や先手後手にかかわるので、簡単に妥協できないところです。

この対局は非常に持ち時間が少なかったのですが、ハネられて「外の白を壊滅させる手はないか」と全ての考慮時間を投入して考えました。しかし思いつかず、結局生き生きルートを選びます。
出来上がり図を見て、対局中は少し打ちづらいかなと思っていました。ただ検討で話を聞くに相手も自信はなかったようです。AIによると実際の形勢は少し白優勢といった感じのようですね。
もちろん盤面は広いのでまだまだ分かりません。黒15,17と自身の勢力圏を広げていきます。ここで白18のノゾキが非常に悩ましい様子見。大人しく繋ぐのは悔しいのですが、反発して利益が出るようにも思えない。秒に追われて選択したのは……?

1.3のツケ切りです。しかし、黒15までの格好はどう見てもひどい利かされ。ここにて白の勝勢が確立されました。
1は白2や白4、黒7のあたりに打つのが候補で、それならばまだ先は長かったでしょうか。さらに、実戦の黒5も悪く、黒7の地点にノビておけばまだしもだったようです。少し考えたのですが、ツケ切って抜かせるのは人間の発想ではないかと思い廃案にしてしまいました。
白16がこれまた厳しいシチョウアタリ。正直こんなことをやらず、11の左下にカケるぐらいでも白の勝ちは決定的なのですが、このあたりは早碁の勢いといったところでしょうか。

黒はシチョウに抱えられるわけにもいかず、1と押し上げます。黒は頑張れるだけ頑張らないといけないのですが、白8も強烈なパンチ。13,15と愚形を強いられて、黒17まで来たところで白は仕上げの一撃を決めにいきます。

まずは失敗図から。
白1と進出。自然な着想ではあり、この手自体は悪くありません。
しかし、黒4となった時に、安全第一で白5と打つと黒6と真ん中の白一団を取られ、これは白が優勢とも言えないぐらいの差まで詰まってしまいます。実際には白5で4の上にアテることで、ほとんど実戦の進行に回帰して、白の勝ちになるのですが、白1と打ってそのコースを選ぶのは若干不自然に思え、けっこうこの図になってしまいそうな感じがあります。

正解は白1とさせてください。
狙いは単純明快。黒5子を取る手と、星に出ていく手が見合いで、黒がバラバラになります。黒地が破壊され、白の生きが確定するため、非常に分かりやすい手ですね。対局中のことを正確に記憶しているわけではありませんが、少なくとも途中まではこの手が見えていなかった覚えがあります。
黒は本当に打つ手に困っているのですが、ちょっと投了にも早いので、とりあえず黒5子を助け出して少しでもマシな図を選ぶしかありません。

実戦進行です。白17まで黒陣の中で大威張りで生きることができ、白がうまくやった格好です。(正確には白13で14とはみ出していればより良いです)
黒地が全くないわけではないしまだ盤面も広いこの局面。白を持っているのが僕だったら分からないところですが、表四段相手にこの局面から逆転するのは至難の業かと思います。事実上白の勝ちが確定したと言っても良いでしょう。
打たれてみれば当たり前のノゾキですが、シンプルな良い手でした。こういう手を逃さないのが強さですね。
やはり若手有望株の表四段は強かった。差を実感しました。
悲しくなってきたので今月はこのあたりで筆を置かせていただきます。また次回♪





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