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笠原悠暉プロの盤上見聞録⑥~次の一手コラム~【後編】AI登場以降何が変わったか?例えばシチョウアタリの常識も?実践を通して笠原プロが掘り下げます。

  • hnagao0
  • 54 分前
  • 読了時間: 5分

こんにちは。棋士の笠原悠暉です。先月分の続きということで、どんなんだったか忘れた~といった方はぜひそちらの方も振り返っていただければと思います。宜しくお願いします。まずはテーマ図を再掲します。

難解な戦いで1,2の交換をしたところ。このあとの構想を問います。


さっそく解答……というわけにもいかないので、先月時点の図から少し手順を進めたところを振り返っていきます。


左上のシチョウアタリバトルが終わり、1と逃げ出されたところ。

一応これに対しては白2と切るつもりでした。右下と左上のフリカワリになるな……と考えていたところ、なんと黒は3と飛び。これにはびっくりしました。取れるけど……?


仮に白1と取ってみます。すると黒は2とノビキリます。ノビキリを打つだけなら逃げ出す前からいつでも打てるため、白3の抜き(一例です。先月記事ほどではありませんが少し甘いかも)に対して左上方面で戦果を上げないといけなくなります。白の切り1本を悪手にするためには勢い4,6でしょうか。この図にそこまで自信が持てなかったので廃案としたのですが、理屈で考えると白がいいように思えます。AI先生によるとそもそも黒の逃げ出し1本がなくても互角に近いため、白は明確にこの図を選ぶべきでした。

いやぁ、自分もそう思ったんですけどね……相手に「この図は自信あるよ」と、シチョウで取られるのが見え見えの中で左辺をトばれると実戦心理として自信がなくなってくるんですよね笑

ということで実戦は白1と先に左辺で戦う道を選びました。こちらの図もなかなか魅力的に思えた、というのもシチョウを取らなかった理由としてはありますね。黒4はあまり想定していなかったのですが頑強な良い抵抗でした。左辺を頑張り切ればこれによってシチョウは黒有利になっています。白7以降も様々な手はあるかもしれませんが早碁ということもありここは直感で決めてしまいました。第一感は11の押しが良いところで戦えるかと思ったのですが、実際は難しい。白13はここに切らない手もあり、実戦も切る前に大長考した覚えがありますが切りのルートを選びました。切った時に打つ手が悩ましいところ。黒14は他の手も考えられますが、この手を本線で考えていました。

ちなみに、この局面、自分にしては珍しく正解のチョイスをします。これを自慢したいがためにこの記事を書いているところもありますね笑

1と逃げてみます。これは2のアタリがぴったりで、黒4となると白は取られてしまいます。5以降もがいてみてもうまくいかず、投了を余儀なくされてしまいます。

白1の切り。石の流れとしては素直な手です。しかし、黒4と切られてそのあとが続かない。白は抜かずに5と繋ぐのがよく、白7も手筋でなんとか形にはなりますが、右下はシチョウを逃げ出されているところ。黒8に回られると黒がかなり打ちやすくなります。手として自然なのはこの切りと先ほどの逃げ出しぐらい。つまりテーマ図の1は悪手、と思えますが……?

1,3がこの局面ならではの素晴らしいコンビネーションでした。20年近く囲碁をやってきましたが、こういう形はほとんど見たことがありません。

この手の何が素晴らしいかを説明します。黒の打つ手は取るか繋ぐかしかありません。

1と抜きます。すると白は2とノビることができます。ここでアテてしまうと2つ前の図に戻ってしまい白が悪くなってしまいますが、ノビられるのがポイント。黒が3からゴリゴリ切って行こうとすると、白6までピタッとオイオトシになり、中押し勝ちを収めることができます。

なので黒は3と打たず右下に回ります。それでもいい勝負ですが、気持ちとしてはここを抜きで我慢して中央を止められるというのは我慢できない。

ということで勢い1とツナぎたい。実戦もこうなりました。

白は2を先手で打てる(2-十六のマガリがある)のがポイント。以下10までと進んで、盤面の色が大きく変わって判断が難しいところですが、この格好は左辺を大きく破って真ん中も上側は制圧、さらにイジメる楽しみも残っている白が大成功!!……のはずだったのですが、悩んで打った白8が大悪手だったようで実際の形勢は互角。それさえなければ白成功といった感じでした。やはり囲碁は難しい。


ここで示した図はあくまでも一例なのですが、実際の対局で、テーマ図周辺の局面が難しすぎてお互い笑いながら打っていたことが印象に残っています。読みも難しい上に判断もとても悩ましいところでした。

この対局は大熱戦の末、盤面10目ほど負けることになりました。お互い勝敗は分かっていなかったようですが、時間がない中でのヨセで勝敗が動いたと記憶しています。(終盤時間がなく覚えていないため、途中までしか棋譜を残せなかった)

ちなみになぜ「ほど」という表記なのかと言うと、整地が行われず審判団のスマホアプリでスキャンして結果を表示する、という方法だったからです。1と1/2子勝ち?とかそういう感じだったような気がしますが、変換をあまりちゃんと理解できていないということですね(笑)


この対局に勝ったお相手は、結果的に優勝と同率の5勝1敗ですがスイス式(のようなもの)で3位になっていました。自分は3勝3敗で大会を終え、3勝組の中では最高の36人中14位。負けた相手が3位4位8位だったということで、組み合わせ的にはかなり運が悪かったですが、ある程度いい勝負ができ、とても良い刺激になりました。この体験、強い相手にそこそこやれたという自信がなければこの年のプロ試験で入段を果たすことができなかったかも、とも思っています。本当に楽しい大会でした。


だらだらと思い出話フェーズに入ってしまったので今月はここまで。来月は(今のところ)スペシャルな相手との対局について見ていく予定ですのでお楽しみに♪


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