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笠原悠暉プロの盤上見聞録⑥~次の一手コラム~【前編】AI登場以降何が変わったか?例えばシチョウアタリの常識も?実践を通して笠原プロが掘り下げます。

  • hnagao0
  • 9 時間前
  • 読了時間: 5分

こんにちは。棋士の笠原悠暉です。

今年の夏は本当に暑いですね。具体的にどの日だったか忘れたのですが、なんか異様に暑くなったタイミングがあり、その日に研究会のために外出したのですが、日光にやられて脳が溶けてる……と思いながら対局した覚えがあります。

さて、夏の風物詩の花火大会や海水浴などというアウトドアイベントと無縁の人生を送ってきた自分にとって、夏ってなんかいいことある?室内の冷房が寒いだけの季節か?とか考えていたのですが、そういえば3年前にめっちゃ楽しいことあったな、と思い出し、この記事を執筆しています。

それは囲碁の国際大会出場。知り合いに声をかけていただき、香港で開催された大学生の国際囲碁大会に出場させていただきました。

今回はその時の対局について振り返っていきます。中国ルール、僕の白番。



左上にハサミを打たれた局面。どこに打ちますか?

※ヒント 正解はたくさんあります笑この大会は東アジア圏の様々な地域から選手が出場していました。各国、地域(チーム)で3人ずつ出場し、個人戦、またチーム3人の成績を総合した団体戦が行われました。この対局は6戦中の4戦目。2勝1敗で迎えました。個人36人中6人が入賞して賞金を獲得できるというところで、ここで踏ん張れば入賞圏内といったところ。中国のインターネットサイトで中継も行われていたようで、いろんな意味で気合が入ります。

ちなみに大会は60分切れ負けのルールで行われました。日本の学生大会で40分、45分切れ負けは慣れているとはいえ、やはり切れ負けルールは怖いところ。60分あると少し慎重に時間を使いたくなりますが、油断しているとすぐ時間が消えているので、けっこう素早い決断が重要になってきます。


さて、盤面の方に話を戻しましょう。

まず、左上のハサミと表記しましたが、実はこの手は右下のシチョウアタリ。実はシチョウを逃げられてもそこまで絶望的に悪いわけではないのですが、逃げ出されると多少は苦しいため、基本的には逃げ出しを防ぐ手で考えます。



白1の抜き。右下の逃げ出しだけでなく、17-十五の切りや、18-十四のハサミツケの味も防ぐ、本手と言えます。この抜いた厚みは素晴らしく、全局を制圧します。他の間に合わせのような手では薄く、ここに抜いておけば間違いありません。


と言われていたことでしょう。十年前までは


AI、ならびに現代囲碁の棋士の感覚的には、1はヌルい手という認識が共通しています。他の手でも逃げ出しを防げるのに、あえて一番カチカチな右下にわざわざ1手かける必要が全くない、という説明が一番シンプルでしょうか?当然抜くメリットもあるため、悪手とは思いませんが、アマ高段を目指すのであればこの感覚はあった方がいいかもしれません。ちなみに某AIによるとこの抜きは4目損。

他のAIだと1目程度の差でしたし、さすがに言い過ぎだと思いたいですね笑ということで、右下の逃げ出しを防ぎつつ、左上を応援する働いた手を考えます。



実戦は「抜きたいけど……AIに怒られるしなぁ」という思考回路で真ん中方面に転がすことを決意しました。先ほどヌルい、と言いましたが僕だって抜きたいのです。本当に手厚いですもんね。選んだ着点は白1。理由は単純。左上に1番近そうだからですね。ただ、黒2以降と進むと、黒8のハネが非常に気持ち良いシチョウアタリになってしまっています。黒10までシチョウを逃げ出されてしまいました。

別に白が悪いわけではないのですが、少し序盤作戦としては失敗している感じがあります。いつの間にかシチョウを逃げ出されていますもんね。



当然に見える先ほどの図の白7では、1とこちらの形の急所にノビるべきだったようです。黒2とノビられて左上が苦しいように見えましたが、5-八のノビを保留して3の外すのが大変素晴らしい手。言われてみれば当然の手という感じもしますが、言われるまで全く発想にありませんでした。今後の戦いは様々な展開が考えられますが、白としては先に中央を制圧しているため、少し気楽な意味があります。(形勢は全くの互角です)



最初の問題図に戻りますと、白1などもう少し下に寄せる方が良かったようです。

2と裂かせて、ここで3と下から潜ります。黒が4,6とつながった時に、7の押しが非常に素晴らしい地点になっています。これを真似できるかと言われると自分の実力では真似できなさそうなのですが、こういった石運びもあるんだな、と前衛芸術家のアートを眺める感覚で見てもらえれば幸いです。


ちなみに全て列挙はしませんが、白1はあくまでも正解の一例であり、2の地点から右下方面の逃げ出しを防ぐ手であればだいたい正解と言えます。実際にAIの候補手もこのあたりに大量に並んでいます。15個ぐらい光っていましたね。ただ、実戦だけは正解とは言えませんでした。左上の応援に向かったつもりが。左上方面に対して重くなってしまったようです。力の入れどころが難しいですね。

この対局はもっといろいろ振り返っていきたいところですが、途中で無駄なことを話しすぎてけっこう文章が長くなってしまったので、続きは来月に回したいと思います。


今回は初めての試み。来月のテーマ図を予告して筆を置きたいと思います。それではまた来月お会いしましょう♪



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