対局中の両者 左 表悠斗初段 右 笠原悠暉学生最強位
2021/5/30
特別記念対局
互先 表 悠斗 初段 解説 谷口 徹五段
先番 笠原悠暉 学生最強位 聞き手 日野里衣子
94手まで打掛 観戦記 知得
94手で打掛けにした後、両者とも形勢は自分が良いと主張した。その意気やよしである。
両者ともこの春、激動の時期に道は違へどそれぞれの世界に船出することになった。
若者たちに幸多かれと祈るばかりだ。さて、局面に目を移せばいきなり先番笠原の天元である。
【第1譜】(1~11)
笠原は、今まで節目となる重要な対局で初手天元を打っている。さらに、五の五、大高目と中央大作戦である。最近では、山下敬吾九段が試みている上段の構えである。対する表プロはどうも初手天元を予想していた節がある。白8のツケは、<参考図1>黒1のハネを期待して以下白6までとなれば、白良しの判断である。
<参考図1>
黒9のツキアタリから黒11のキリが、笠原が用意していた強手、天元の石が働いている。
白は12とサガル他はないのだ。
【第2譜】(1~12)
<参考図2>
<参考図2>白1とアテて黒を取りにいくのは天元の石が働いてシチョウとなり白が潰れる。
戦いになれば天元が活きてくる道理である。
【第3譜】(1~22)
白12と下がれば以下白20まではこうなるところ、そこで黒は21と隅ではっきり活きる手を選んだ
白22が表初段の後悔した一手。
<参考図3>ここは、白1と押さえても実戦と同じだった。
ところが、黒23がお手伝い、白の失着を咎めるチャンスを逸した。
【第4譜】(1~23)
<参考図4>ここは、黒1と曲がる一手、白2以下セキになる。実戦とは右辺の白の強度がまるで違う。
【第4譜】(1~29)白24のオサエが効いては右辺の白はほぼ活きである。黒29の割り込みは好手。
<参考図5>白1と抱えれば以下6まで黒シチョウ良しなのでこれは白負けである。
【第5譜】(1~30)白30のカケツギが軽くて洒落た手
<参考図6>黒のアテにはコウで受け流す。白4が絶好のコウ立てになる。
【第7譜】(1~32)黒31のツギは仕方がない。右辺が強いので白32まで行けるのが白の自慢だ。
白が走っている。
【第8譜】(1~39)地で白に走られても黒33、35と笠原は中央を厚くする。天元に打ったからにはこう打つべきと彼の信念は揺らがない。黒39の一手を見よ!!
<参考図7>常識的には、白1と受けるところ、以下黒16までが相場と笠原はいう。
【第9譜】(1~50)白40は、気合の一手、黒のいいなりになっていては勝利はおぼつかない。
しかし、黒41のツケから白石を分断して局面は賑やかになってきた。
黒49は手筋のツケ、繋ぐようではチャンスはやってこない。
<参考図8>ここで黒1と伸びても戦果は期待できない。
【第10譜】(1~62)黒51は強手、ここまでやらないとチャンスはないとみた。
白50(3-七)
<参考図9>ここで黒1のノゾキはどうかと知得からの提案だが白2と曲がられてどうかとの返答
どうも笠原くん気乗りしない様子だが、白2に黒3が用意の一手、以下9までやれると思うが如何、
表初段は、黒1のノゾキには9ー三の一間トビとのこと黒9まで黒もやれるという意見だった。
【第11譜】(1~65)黒63と白64の交換をしてからの黒65のノゾキだが、黒に損な交換なので
白48・58の二子が軽くなっているのだ。
<参考図10>ここで白1が素晴らしい応手だった。この手を笠原は見てなかったという。
<参考図11>白に黒2以下出切っても白9まで簡単にしのがれてしまう。
【第12譜】(1~71)ここで黒は67とコウを仕掛けるが黒69がどうだったか、黒71までの代償では不十分だったようだ。
<参考図12>この後、白1のハネから白5まで凌げそうだ。
<参考図13>黒1のコウ立てが好手、黒3までとなれば上辺の白の息が切れていた。この手は解説の谷口徹五段も強調していたところ、ただ、白3と受けるかもしれず難解な場面ではある。
白72とハネて再度コウが始まったが、黒のコウ立てが難しい。
【第13譜】(1~80) 白72(6-二ハネ) 黒77(7-二ヌキ)
黒のコウ立ては?
<参考図13>黒1が正解です。白はコウを解消して次の一手は?
<参考図14>黒3と下がるのが正解のようだ。この手は笠原くんも認めている。以下5までだが、白6からはコウになるので実戦よりは優る。また、右辺の白を攻める楽しみも残っている。
【第14譜】(1~94)黒83のハネに白84が好手だった。
<参考図15>白84のキリに黒2とアテると白5まで渡られて白が良い。
白84のキリに黒アテ(17-八)が苦心の手だが、白92まで。この図は参考図14よりもかなり劣っている。
<参考図15>①まず白1から白は無条件で活きる手が残っている。
②右辺の白が強い形になっている。
【最終譜】白94まで打掛けとなったが、両者とも若さ溢れる活きのいい碁を見せてくれた。
局後の感想で両者とも形勢は自分がいいと主張したところでは満場の拍手が起こった。
若者はこうでなくっちゃ。世界は君たちのものである。コロナ後の世界を盛り上げるのは若き者らの熱
である。それを信じている。
左 表悠斗新初段 右 笠原悠暉学生最強位
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